3279711 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

人生朝露

人生朝露

「素朴」対「機心」。

今日は、
荘子。
とりあえず、基本に戻りましょ。

Zhuangzi
『庖丁為文惠君解牛、手之所触、肩之所倚、足之所履、膝之所鐘。序然響然、奏刀丞然,莫不中音,合於桑林之舞,乃中經首之會。文惠君曰「喜。善哉。技蓋至此乎」。庖丁釋刀對曰「臣之所好者道也、進乎技矣。始臣之解牛之時、所見無非牛者。三年之後、未嘗見全牛也。方今之時、臣以神遇、而不以目視、官知止而神欲行。依乎天理、批大谷、道大穴、因其固然。技經肯綮之未嘗、而況大骨乎」。』(『荘子』養生主 第三)
『文惠君曰「喜。善哉。技蓋至此乎」。庖丁釋刀對曰「臣之所好者道也、進乎技矣。始臣之解牛之時、所見無非牛者。三年之後、未嘗見全牛也。方今之時、臣以神遇、而不以目視、官知止而神欲行。依乎天理、批大谷、道大穴、因其固然。技經肯綮之未嘗、而況大骨乎」。』
→庖丁(ほうてい)という料理人が、ある日文惠君のために牛を料理した。料理人のなめらかな手さばき、肩の動き、足の踏み込み、膝の使い方・・それが、牛刀が進む音と調和して、まるでひとつの音楽のようであった。その身のこなしは「桑林之舞」を踊っているようであり、音は「經首之会」の楽曲の調べを聴いているようでもあった。
→文惠君は料理人の妙技を見て、「素晴らしい!究極の奥義とはこのことだな。」というと、庖丁は牛刀を置いて、「私が好むのは技ではなく、その上の道というものです。「私は初めのころ、牛の外見の姿しか見ていませんでした。三年後、やっと牛の外見へのこだわりがなくなり、部位ごとの違いが分るようになりました。今となっては、心で牛を見ていまして、目で牛を見ることはなくなっています。目にとらわれるのではなく、天理を心で捉えて、それにしたがっているのです。牛がもともと持っている自然の構造に逆らわず、皮と肉のつくり、骨と肉のつくりに沿って刃を進めれば、骨に刃が当たることもなく、滑らかに仕事が運ぶのです。」

『良庖歳更刀,割也。族庖月更刀,折也。今臣之刀十九年矣,所解數千牛矣,而刀刃若新發於砥。』
→良い庖丁は、一年毎に刀をを替えます。刃こぼれができてしまうからです。月並みの庖丁は一月ごとに刀を替えます。折れてしまうからです。今、私は十九年使い続け、一千近くの牛肉を捌いてまいりましたが、砥石で研いだようなままのような状態で、今でも使い続けています。

Zhuangzi
『桓公讀書於堂上、輪扁断輪於堂下、釋椎鑿而上、問桓公曰。「敢問公之所讀者何言邪?」公曰「聖人之言也。」曰「聖人在乎?」公曰「已死矣。」曰「然則君之所讀者、古人之糟魄已夫」桓公曰「寡人讀書、輪人安得議乎。有説則可、無説則死。」輪扁曰「臣也、以臣之事觀之。断輪、徐則甘而不固、疾則苦而不入。不徐不疾、得之於手而應於心、口不能言、有數存焉於其間。臣不能以?臣之子、臣之子亦不能受之於臣、是以行年七十而老断輪。古之人與其不可傳也死矣、然則君之所讀者、古人之糟魄已矣。」』(『荘子』 天道 第十三)
→桓公が書物を読んでいると、輪扁なる車輪を作る職人が「何を読んでいるんですか?」と聞いてきた。桓公は「聖人の言葉だよ」と答えた。すると職人は「その聖人様は生きているんですか?」桓公「いや、亡くなっておられる」職人「なんだ、あなたさまは死んだ人の残りかすみたいなものを読んでいるだけじゃないですか」。
→桓公は怒って「お前なんぞの身分でわしの学問をバカにするのか、答え次第によっては命はないぞ!」というと、輪扁なる職人は「車輪を作るときに、ぴたりとはめ合わせる技は、言葉で伝えることも出来ませんし、私の息子にも教えることはできませんでした。自分の経験と勘を継がせる事ができませんで、私を越える者もおらず、齢七十の今になっても車輪を作る仕事をしています。さて、今でも働いて報酬をもらっている私に言わせてもらえば、お殿様の読んでいる本は、今を生きていない死んだ人の書いたもの。いわば、古人の糟粕ではありませんか?」

Zhuangzi
『子貢南遊於楚、反於晋、過漢陰、見一丈人方将為圃畦、鑿隧而入井、抱甕而出灌、滑滑然用力甚多而見功寡。子貢曰「有械於此、一日浸百畦、用力甚寡而見功多、夫子不欲乎?」為圃者仰而視之曰「奈何?」曰「鑿木為機、後重前軽、挈水若抽、數如失湯、其名為棉。為圃者忿然作色而笑曰「吾聞之吾師、『有機械者必有機事、有機事者必有機心。機心存於胸中、則純白不備、純白不備、則神生不定。神生不定者、道之所不載也。』吾非不知、羞而不為也。」子貢瞞然慚、俯而不對。』(『荘子』天地 第十二)
→子貢が南の楚に遊びに行き、晋に帰る途中、漢水の南を通った。見ると、一人の老人が畑仕事をしている。地下道にわざわざ入っていって、甕を担いで上がってきては、畑に水を注いでいる。大変な重労働のわりに、その効果は少ない。子貢は「機械のからくりを知らないのですか?一日で百畦の畑にも水をあげられますよ。小さな力で効果は大きいのです。あなたも試してみませんか?」お百姓は仰ぎ見て「どうするのかね?」子貢「木をくりぬいて、からくりを作るんです。後ろは重く、前は軽く。小さな力で溢れるほどに多くの水を汲み上げられるのです。其の名を「はねつるべ」といいます。」お百姓は、むっとしたあとに、笑って答えた。「私は先生に言われたことがある。『機械がある者には、機械のための仕事ができてしまう。機械のための仕事ができると、機械の働きに捕らわれる心ができてしまう。機械の働きに捕らわれる心ができると、純白の心が失われ、純白の心が失われると、心は安らぎを失ってしまう。心が安定しなくなると、人の道を踏み外してしまう。』私は機械の便利さを知らないのではない。機械に頼って生きようとすることが恥ずかしくて、そうしないだけだ。」子貢は、自らのおせっかいを恥じて、返す言葉を失った。

参照:YouTube 世界最勇菜刀伯(HD)
http://www.youtube.com/watch?v=4keCnoTRTUY

『機械に使われたいのか?機械を使いたいのか?どっちだ?』

Zhuangzi
『知士無思慮之変則不楽、辯士無談説之序則不楽、察士無凌誹之事則不楽、皆囿於物者也。』(徐無鬼 第二十四)
→知識のある者は、自らの才覚が発揮できる事件がなければ楽しまず、弁舌の立つ者は、議論の糸口になりそうな問題が起きなければ楽しまず、告発をする者は、他人を謗る弱点がなければ楽しまない。皆、外物にとらわれているからだ。

参照:橘玲 公式サイト 「評判中毒」という病
http://www.tachibana-akira.com/2011/03/2302

当ブログ 荘子の養生と鬱
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5030

Zhuangzi
『且夫失性有五:一曰五色乱目、使目不明。二曰五聲乱耳、使耳不聴。三曰五臭薫鼻、困唆中桑。四曰五味濁口、使口萬爽、五曰趣舍滑心、使性飛揚。此五者、皆生之害也。』(「荘子」天地 第十二)
→本性を失うには五つの事柄がある。一つは五色が目を乱し視力を害うこと。一つは五声が耳をかき回し、聴力を害うこと。一つは五臭が鼻を困らせ、嗅覚を害うこと。一つは五味が口を濁らせ、味覚を害うこと。五つは取捨選択の多さが、人の性の落ち着きを奪うこと。この五つは、生きることへの害である。

Zhuangzi
「故至徳之世、其行填填、其視顛顛。当是時也、山無蹊隧、澤無舟梁。萬物群生、連属其郷。禽獣成群、草木遂長。是故禽獣可係羈而遊、烏鵲之巣可攀援而閲。夫至徳之世、同與禽獣居、族與萬物並、悪乎知君子小人哉。同乎無知、其徳不離。同乎無欲、是謂素樸。素樸而民性得矣。」(『荘子』 馬蹄 第九)
→「ゆえに、至徳の世というのは、束縛もなく人の行いは穏やかで、人々の瞳は明るかった。かつての至徳の世では、山には道も拓かれず、川には舟も無かった。万物は群生して、棲み分けをする必要もなかった。動物たちは群れを成し、草木は伸びやかに成長した。ゆえに、動物を紐に繋いで共に遊ぶことが出来たし、木によじ登って、カササギの巣をのぞいてみることができた。その至徳の世においては、動物たちと同じ場所に住み、万物と並んで暮らしていた。そこに君子や小人なんているはずがない。人々はさもしい知識も持たず、徳が心から離れず、無欲でいた。これを「素樸(そぼく)」という。素樸だからこそこそ民はあるがままでいられる。」

Zhuangzi
『昔者荘周夢為胡蝶、栩栩然胡蝶也、自喩適志與。不知周也。俄然覚、則遽遽然周也。不知周之夢為胡蝶與、胡蝶之夢為周與。周與胡蝶、則必有分矣。此之謂物化。』(『荘子』斉物論 第二)」
→昔、荘周という人が、蝶になる夢をみた。
ひらひらゆらゆらと、彼は、夢の中では当たり前のように蝶になっていた。自分が荘周という人間だなんてすっかり忘れていた。ふと目覚めると、彼は蝶の夢から現実の人間・荘周に戻っていた。まどろみの中で、自分は夢で、蝶になったのか?実は、蝶の夢が自分の現実ではないのか?そんな考えがゆらゆらとしている。自分は蝶だったのか、蝶が自分であることなんて・・自分と蝶には大きな違いがあるはずなのに・・これを物化という。

参照:YouTube 四輪伯的Country Road
http://www.youtube.com/watch?v=RlFB2pyHNQE

起きよ起きよ 我が友にせん 寝る胡蝶  芭蕉

当ブログは、台湾のアニメーション作家・邱士展(Stan Chiou)の活動を応援しています。

十牛図 騎牛帰家。

参照:Wikipedia 十牛図
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%81%E7%89%9B%E5%9B%B3

当ブログ アバターと荘子と鈴木大拙。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5044

小泉八雲と荘子。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5046

自然を感じてしまう人。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5061

今日はこの辺で。


© Rakuten Group, Inc.